骨粗鬆症の診断

骨粗鬆症は早期発見が重要です。医師は複数の検査を行って骨の健康状態を評価し、骨粗鬆症治療が必要かどうかを判断します。

骨の健康診断について

骨の健康状態を確認するため、医師は通常次のような検査を行います。

  • 既往歴の確認 これには、直近の骨折歴のみならず、家族の骨折既往歴に関する情報も含まれます。

  • 骨折リスク評価ツール(例:FRAX®)FRAX®は特定のリスク因子に基づいて今後10年間の骨折の確率を評価するオンラインツールです。

  • 骨密度 (BMD) 検査は、骨粗鬆症や骨折のリスク因子がある場合や年齢に応じて推奨されることがあります。BMD検査の推奨基準と保険適用範囲は国によって異なります。例として米国の場合、65歳以上の女性全員および70歳以上の男性全員にBMD検査の実施を推奨するガイドラインが制定されています。また、50歳以降において骨折歴のある場合やリスク因子のある50~64歳の女性または59~69歳の男性にも検査が推奨されています。

50歳以降で起こる骨折は、将来の更なる骨折の確率を高める最も深刻なリスク因子の一つとされています。その他の重要なリスク因子には、骨粗鬆症およびまたは直系家族における骨折の既往歴、頻繁に起こる転倒、そして特定の疾患(関節リウマチ、糖尿病など)や薬剤(ステロイド)なども含まれます。

DXA法による骨密度 (BMD) 検査

迅速かつ
無痛で
非侵襲的な検査

骨折の診断に用いられる従来のX線検査では骨密度 (BMD) を測定することはできません。骨密度はより専門的な技術を用いて測定する必要があります。

骨密度検査には様々な種類がありますが、最も確立した方法で一般的に使用されている検査はDXA (Dual-energy X-ray Absorptiometry)法と呼ばれています。

DXA検査は、骨密度を測定する安全で迅速かつ痛みを伴わない方法です。結果はTスコアとして示され、骨量が正常範囲内にあるか、骨減少症または骨粗鬆症であるかどうかを判断します。

以下のDXA検査結果の見方の項目をチェックしてみましょう。

DXA検査を行う医療施設や使用する機種によっては、骨の強度をより正確に評価するのに有用な追加検査を実施する場合があります。例えば、自分では普段気付くことが難しい脊椎の骨折を特定する脊椎圧迫骨折の評価(Vertebral Fracture Assessment, VFA)や、脊椎骨の微細な内部構造を(間接的に)評価する海綿骨構造指標(Trabecular Bone Score, TBS)などが挙げられます。

DXA検査の結果は、通常腰椎と股関節 (大腿骨近位部) の骨密度をTスコアとして示します。これらの値は、健康な若年層の基準集団における同部位の平均骨密度と比較した場合の自身の骨密度を表しています。骨密度が若年層の平均値を上回っている場合は正のスコア(例:Tスコア=1.0)、下回っている場合は負のスコア(例:Tスコア=-1.0)となります。Tスコアは、骨密度が正常範囲内にあるか、骨量減少(骨粗鬆症予備軍)または骨粗鬆症の状態にあるかを判断するために使用されます。

骨密度検査で骨量減少症または骨粗鬆症と診断された場合、骨折のリスクが高まっていることを意味します。

判定基準 骨密度 (BMD) Tスコア (標準偏差, SD)
正常 -1 以上
骨量減少 -1 ~ -2.5 の間
骨粗鬆症 -2.5 以下
重度骨粗鬆症 -2.5 以下かつ少なくとも1つの脆弱性骨折あり

すでに骨折したことがある場合、またはFRAX評価で骨折のリスクが高いと判定された場合、Tスコアが骨減少症の範囲にある場合でも、骨折リスクが高い(高リスク)と見なされます。

骨密度検査の再検査の必要性は、個々の状況によって異なります。

骨粗鬆症治療薬の開始または変更後、1~2年後に治療効果を確認するため、骨密度検査を繰り返し行うことが一般的です。また、治療を受けていないが治療が必要な段階に近づいている場合も、1~2年後に検査を繰り返すことがあります。可能であれば、同じ施設で骨密度検査を再実施してください。

骨粗鬆症の診断、骨密度および骨の健康評価のためのその他の検査

DXA以外にも骨の健康状態を評価できる検査は存在しますが、これらはあまり一般的ではなく、地域によっては利用できない場合や保険適用外となる可能性があります。それでも、骨密度以上の有益な情報を提供したり、DXA検査が必要かどうかを判断するのに役立ちます。例として次のような検査があります。

腰椎または大腿骨における骨密度 (BMD) の測定およびTスコアの算出において、DXA法と同等の性能を示す超音波ベースの測定技術です。

超音波を用いてかかとや足の指に伝わる速度などを測定し骨量を評価するために使用されます。ただし骨量そのものを測定するわけではないため、骨粗鬆症の確定診断には用いられず補助的なスクリーニング検査として利用されます。

CTスキャナーを用いて、腰椎または大腿骨頚部の骨量を測定します。

前腕の骨である橈骨の遠位端 (手首に近い部分) または下腿の脛骨の近位部の骨量を測定します。

現在、AIによる分析を利用したX線、CTスキャン、その他の画像診断により、特に脊椎の骨折をより容易かつ正確に診断できるようになっています。

骨粗鬆症の診断を受けたら:次のステップ

骨粗鬆症と診断されると、どのように対処すればよいのか分からず、不安や戸惑いを感じることがあるかもしれません。まずは、病気について正しい情報を積極的に集め、ご自身の診断結果を理解し、日々の生活の中で上手に管理していくことが大切です。疑問や不安なことがあれば迷わずに相談するようにしましょう

骨粗鬆症は、正しく効果的な方法で症状や状態を管理することが大切です。そうすることで、病気と前向きに向き合いながら、安心して日常生活を送ることができます。

医師と今後どのように骨粗鬆症に対応するべきか相談してみましょう。過去の病歴や現在の健康状態に基づいて、各個人に適したアドバイスや注意事項を提供してくれるでしょう。必要に応じて生活習慣(食事、運動など)における対応や、サプリメントの服用、薬物療法など多岐に渡る場合があります。

経過観察のためのDXA検査の予定も含めて治療計画がきちんと立てられているか確認しましょう。

治療を途中でやめてしまうと、症状が悪化するおそれがあります。必ず医師の指示に従い、自己判断で治療を中断しないようにしましょう。 骨粗鬆症の治療について

転倒は骨折につながる可能性があるため、バランス機能の評価も行う必要があります。自宅の環境を確認し、転倒リスクを減らすために必要な対策(障害物の除去、手すりの設置など)をとってみましょう。

  • 安全で効果的な運動プログラムを、自分のニーズと能力に合わせて始めましょう。体重負荷運動、筋力強化運動、バランス運動は最も効果的な運動です。特に脊椎骨折の既往がある場合は、転倒やけがにつながる可能性のある高負荷の運動や活動は避けてください。医師と相談して自分の健康状態に最も適した運動を指導できる理学療法士を紹介してもらうこともできます。
  • 骨の健康をサポートするため、十分なタンパク質とビタミンD、そしてカルシウムを豊富に含むバランスのとれた食事を心がけましょう。骨の健康のための栄養については栄養の項目を参考にしてみましょう。
  • アルコール摂取を減らし禁煙をする
  • 健康的な体重を維持しましょう

他の骨粗鬆症の患者と交流することで精神的な支えや経験の共有に繋がることもあります。骨粗鬆症の治療や管理を根気強く続けるに当たり、有益な情報を提供してくれる患者支援グループを探すには、骨粗鬆症関連団体に問い合わせて紹介してもらうのも有効な手段の一つです。